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不埒な夢。

女性向け小説ブログ。年齢制限作品込みにつきご注意願います。

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われら星の子2015

大晦日なのにおるすばん
手持無沙汰の0時前
各所の坊主を眺めつつ
ハムなぞつまんでいる次第
みんなえらいんだ ちゃんとゴアイサツしてさ
一年お世話になりました
出会いに感謝 ありがとう
おんなじ言葉が沢山並んで
おやすみ前にも沢山聞いて

部屋にはひとりでいるけれど
本当は 全然ひとりぼっちなんかじゃないんだよ
遠くに住んでるあのひとも
初詣中の誰かさんも
意外などこかの誰かさんが
不思議と声かけてくれるんだ

「ことしもまたごいっしょに
九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。」

母さんの好きな作家が書いた
すてきな新年のゴアイサツ
こんな言葉が書けたなら
もちょっとだけ 近づくことができるかな

さあ やってきました新しい日
昨日と今日の境目を
大事なものだけ持って跳ぼう
泣いたことや落ち込んだことにさようなら
笑ったこととわくわくしたことはポケットに
いちにのさんでまた空を見るんだ
小さな部屋の片隅だけど
窓から覗けば星は明るい
われら星の子 みらいの子
どうぞ後ろを振り向かず
夜明けを待とう 期待しよう
両手に掴んだ諸々が
いつか星のかけらになるよに


---------------------------------

(詩)拝啓 ぼくのかみさま

拝啓 ぼくのかみさま

この間はおつかれさまでした
初めてのフランス公演、とても大変だったでしょう
舞台裏、緊張したあなたの様子をテレビのニュースで拝見しました
三万人の前で跳ねて歌って、目一杯に踊るあなたは、とても小さかった
その一生懸命さが、海外ファンのみんなを楽しませ、喜ばせているのがよくわかりました
ああ、ぼくも見に行くことができたらと、本当に思いました

あなたはぼくを知らないので、ぼくのことを少しだけ言います

ぼくは最近、ようやくあなたのことを知ったものです
まわりからはぶすのろまぬけと呼ばれています
頭と顔と、要領と物覚えがわるいからです
あんまり好きなあだ名ではないけれど、本当のことなので仕方がないです
ビルの掃除の仕事をしていますが、掃除は嫌いです
なので、毎日つらいなあと思いながらはたらいています
好きな食べ物は安い牛丼です
ぼくが牛丼を食べるとみんなが笑うので、仕事を終えてから、部屋で一人で食べます


あなたのことを知ったのは、ある日なんとなくつけていた、テレビのコマーシャルでした
なんだかよくわからない品物を宣伝しているあなたの
笑顔がきらきら光って見えました
あなたの声は明るくてはっきりしていて、とてもかわいいと思いました

ぼくはすぐに、あなたのことが大好きになりました
インターネットを使って、あなたのことを調べました
あなたが歌手であるということや、最近は日本よりも海外で話題になっているということ
それから、沢山の人との熱愛を報道されているということを知りました
あなたを良く思わない世間の人々からは、そのせいで、陰で尻軽呼ばわりされていることも

けれど知れば知るほど、ぼくはあなたのことが好きになりました
どんなあなたにも惹かれました
意地悪そうなときも、愛らしいときも、流出したいやらしい写真も
どんなあなたにも励まされました
歌詞を間違えたときも、カンペを棒読みしたときも、決めポーズに失敗して転んだときも

ぼくのいる世界に、同じようにあなたがいるということ
それを思うだけでぼくは嬉しくて、本当に嬉しくて、涙が出そうになります
たまに、我慢ができなくて泣いてしまうこともあります

あなたに夢中でいるあいだ、ぼくは自分が、なにもできないぶすのろまぬけであることを、忘れることができました
そのときだけ、ぼくは幸せだと思えました
ぼくは自分が大嫌いだったからです
人にからかわれて、馬鹿にされて、なのに心の中でしか怒ることもできないぶすのろまぬけが、ぼくは大、大、大嫌いでした

変わりたいと思ったことが、何度もありました
でもぼくは、なににもなれませんでした
いやだいやだと思いながら、やっぱりぼくは、ぶすのろまぬけになってしまいました
ぼくは自由になりたかったけれど、ぶすのろまぬけは一日中、ぼくについて回りました

だからあなたを知るまでのあいだは、ぼくの毎日は最悪でした
嫌いな掃除をして、人に意地悪や悪口を言われて、それを笑ってごまかして
悔しいと思いながら牛丼を買いこんで、汚い部屋でそれをかきこんで
小さくて薄っぺらい布団に入って、寒くないように身体をかたく丸めて眠るんです

あなたに出会ってからも、ぼくの毎日は変わりません
ぼくはばかなので、違う仕事に変わることもできないし
仕返しがこわいので、悪口を言ってくる人に言い返すこともできない
でも、家に帰って眠るまでの、ほんの少しの時間だけ、あなたがぼくを自由にしてくれる
今日もどこかで、あなたが誰かを楽しませているのだということが、そんなあなたを見たいという気持ちが
まだもう少しがんばろう、という思いを、ぼくのなかに生んでくれる


この世のどんなかみさまも
ぼくを助けてくれなかった
この世のどんなかみさまも
ぼくを救ってくれなかった
ぼくのまわりはきれいなものであふれていて
なのにぼくだけが、いつもきたなくてだめでばかなんです


ぼくのことを知りもしない、明るくてかわいくてあざとくて、ドジで不真面目でふしだらなあなただけが
ぼくに明日も生きていようと思わせてくれる
だからぼくはこう考えたのです
あなたはぼくのかみさまだと
だからぼくには自信があります
あなたがどんなあなたでも
きっとぼくはあなたを好きなままでいられると

ぼくがあなたにのぞむことは、いつまでも輝いていてくれること
テレビやインターネット、沢山のメディアの中
アンチの嫉妬をはねのけ、ファンからの喝采を浴び、いつまでもそこにいてくれること
こんなまずしいぼくにさえも、その輝きがみえることが、どれほど幸せか

拝啓ぼくのかみさま
このたびはそのことをどうしてもお伝えしたく
こうして手紙をしたためました
ぶすのろまぬけのぼくの言葉を
最後まで読んでくれてありがとう
これからもどうぞ、お元気で
ぼくは夜にはたらいているので、今日はこれから眠ります

親愛なるぼくのかみさま
ぼくはあなたが大好きです

the blue


思えば「青」というものを、私は本当によく使っているように思う。
公開を終了した作品にも、いくつか「青」をモチーフにしたものがあった。
書きかけの連載にも「blue」の文字がある。
緑に近いものから濃紺、灰色がかったものから紫っぽいもの。
「青」の一文字が含む色味は、本当に多い。
従って、私の中にも「青」のイメージに連なるものがたくさんある。
何となく憂鬱な感情。
上手く表現しようのない寂しさ。
爽やかに澄みきって、よーし、負けないぞ、とばかりに、うんと背伸びをしているような心地。

何もかもをなくして、ぽっかりと胸に穴が開く、あの絶望感。


十歳のある夜に夢を見た。
映画の『学校の怪談』と、アニメの『ゲゲゲの鬼太郎』と、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を混ぜたような夢だった。
精悍な顔をした男の人が、幼いころに亡くなった息子に会いたくて、なにか荒唐無稽なことをしている夢だった。
男の人はその無理がたたって、死にかけてしまう。
そのときほんの少しだけ、亡くなった男の子が現れるのだ。
男の人は涙を流して、そして、男の子と一緒に、行ってしまった。
私は泣きながら目を覚ました。
かなしい夢を見たという私の頭を、母が優しく撫でてくれた。
早い朝の、うすい朝日が照らす部屋は、夢と同じくすんだ青い色をしていた。

すばらしく「思春期」をこじらせていた14歳の夏、ホームステイでアメリカに行った。
日本では絶対にお目にかかれないような、ものすごく横幅の広いハイウェイ。
ワゴンの助手席で外を眺めて、「空が他人の顔をしている」と思った。
自分の知っているどの空とも違う色味で、見たことのない「青」だったからだ。
ああ、自分は今、いつもとは全く違うところにいるのだ、と実感し、興奮すると同時に寂しくなった。
あの青が一体どんな色味だったのか。
十数年たった今となっては、もう心に残っているのは印象だけだ。

三年前の今日、私は買い出しに出かけた帰り、最寄りのラーメン屋で遅い昼食をとっていた。
おもむろに頭の上の照明が揺れだし、飲みかけのスープがこぼれそうになった。
じきに収まるだろうとたかをくくっていた私は、両手でどんぶりを持ち上げ、悠長に間抜け面をさらしていた。
大きなひと揺れがやってきて、それどころではなくなり、慌ててソファからテーブルの下に身を隠した。
隣で喋っていた中学生くらいの二人連れは、それまでの粋がった会話をぶった切り、一目散に店から飛び出していった。
あの日の空も今日みたいに、バカみたいな青だった。

東日本大震災に関しては、twitterでビートたけしさんの言葉をリツイートした。
震災直後に『週刊ポスト』誌上で語ったインタビュー記事、「『被災地に笑いを』なんて戯れ言だ」というものだ。
あの記事で『笑い』となっている部分はそのまま、創作だとか、表現だとか、人を楽しませる何かのすべてに置き換えられると思う。
衣食が足りなければ笑いを楽しむことなんてできない。
目の前に死がちらついているときには、「生きる」で精一杯なのだ。
なら「生きる」とはどういうことなのか。
ただ命がそこに存在しているだけでは、人間は足りない。
人として生きるためには、食べて、寝て、働かなければいけないから。
命が助かっただけでは、命がまだ尽きていないだけでは、人間は、「生きている」とは言えない。

自分の意図に関係なく、命の危険を感じさせられたあの日から何日かたった頃、私の中でふつふつとした怒りがこみ上げた。
こんなことで死なされてたまるか、と。
だのに、それから三年近くたった頃、私は色々な心労が重なって、「死んじゃえばいいじゃん」なんてことを、本気で考えていた。
それだけ「生きる」に疲れていた。
何かを楽しむ余裕も、叶えたい夢も、希望も、気づかないうちに、みんななくしていた。

「3.11を風化させてはならない」。
多くの人が口を揃えて、そう言う。
それは一体どういう意味なのだろう。
「あの日の悲惨な出来事を忘れるな」なのだろうか。
私個人から言わせれば、悲惨な出来事は早いところ忘れたい。
つらい記憶なんて忘れて、それを通り越した未来にある、楽しい何かをきちんと受け取って、また笑えるようになりたい。
「悲惨さ」で傷ついたものや、壊れてしまったもの、永久に失われてしまったものは、山のようにある。
その「悲惨さ」を思い出して、哀しんで、座り込んでいては、私たちは先に進むことができない。
「悲惨」の中に喜ばしい希望はないからだ。
もしも風化させてはいけないものがあるとしたら、それは「悲惨さ」じゃなくて、その悲惨さの中、どうにかして「生きよう」と出した、目一杯の底力だと思いたい。
つらい出来事、哀しい別れ、受け入れるしかない諦め。
そういうものは、ある日突然目の前に立ちはだかる。
私たちは途方に暮れて、嘆いて、どうしたらいいかもわからなくなる。
他でもない自分自身しか、それを乗り越えることなんかできないのに。
どれほど大切なものを失ったとしても、それが二度と手に入らないものでも、私たちはそれを受け入れ、生きていかなければいけないのに。

東日本大震災では、多くの「表現する人」の御多聞にもれず、「自分に何ができるか」を考えさせられた。
ネットの海の片隅の、そのまた片隅で、私も思った。
「書こう」と。
それが少しでも、誰かの励みや楽しみや、つらい現実を離れることの助けになれたらいい、と。
そしてそれが、自分にとってのささやかな希望になってくれたら嬉しい、と。
へたれな私の小さな決意を「青」にたとえるなら、それは瓶覗きのように心許ないものだった。
その青を、私は一度見失った。
もうなくしてしまったのだと思っていた。
幸いにして見つけることができたそれを確かめてれば、やっぱり私の「青」はなんとも、薄くてはかなくて心許ない色味をしていた。
自信のなさのあらわれなのだ。
すぐに揺らいで、不安になって、落ち込んだり元に戻ったり、頑張ろうと思ったそばからまたへこんだり。

今日、こちらはすばらしい晴天で、輝く青には雲一つなかった。
日が落ちてからこの文章を書き始め、パソコンの右下の日付を確かめ、ふと思った。
あれから三年。
私が見た空の青をきっと、会ったことのないどこかの誰かも見ている。
その人も私と同じように、浮いたり沈んだりを繰り返しながら、毎日をやり過ごしているのだろうか。
かなしさや、さびしさや、ちいさな喜びを捕まえながら、そのひとの「生きる」を積み重ねているのだろうか。
尻の青い小説家気取りの身分では、この心地にどんな言葉が適切なのか、色々書き連ねてみてもうまくまとまらない。
だから最後は、「死にたかったあの日の自分」に向かって言うことにする。


いきましょう。
食べて、眠って、天気の良い日には、とりあえず空を眺めましょう。
バカみたいに青いでしょう。
残酷なほど晴れているでしょう。
心の中がすっからかんになって、何もかもがばからしくなるかもしれない。
でも少しだけ。
ほんの少しだけでいいから、耐えてください。
耐えて、食べて、眠ってください。
その「青」が絶対に、あなたにとって必要なものを教えてくれます。
あなたに新しい何かを与え、あるいは、なくしたと思っていた何かを返してくれます。
未来のことはわからないし、不安は消えないかもしれない。
それでも、進もうという気持ちだけは戻ってくるから。
それが、ちゃんと未来を作ってくれるから。


過去の自分に会うことはできないけれど、今、こんな言葉が書けるようになったことを、私はとても嬉しく思う。
不安で不安定な日々はまだ終わっていない。
だからこそ、伝わることを願いたい。
どこかからこの文章を眺めている、希望をなくしたすべての人に。



(詩)pain

辛いだけだってわかっていることに手を出した
我慢が出来なくなったのは多分わたし
予感をずっと抱えていたのはあなた
奪い取るように伸ばした腕の先で
あなたが何かに諦めたように瞼を下げた
どちらのものかわからなかったのはかさついた唇の温度
濡れた舌の熱はわたしのほうが上で
それがそのまま心のちがいであることが切なかった

根比べに負けたわたしはガラスの壁を越えた
ずっとずっと考えていた
一度だけでいいから叩き割ってやりたいって
むこうのあなたの胸倉を掴んでみたかった
迫って詰め寄って問いただして
全部暴いてしまいたかったのだ
たとえ間違いだったとしても
わたしを苦しめるものの正体を
ただのばかばかしい幻想なのか
それとも終わらない夢に惑わされた勘違いか

触れたかったのは心のはずなのに
掴むのは虚しく凪いだあなたのからだ
応えのなさこそがあなたの「答え」
期待通りの落胆がかなしみに燃えていく
合わさる視線ばかりがさめていく
思い知らされるのは片恋とこの先
たやすく扉を閉めることなんてできない
だってわたしは こんなに


捨てられないものはありますか
痛みが続くことがわかっていても
手放せないものはありますか
自分がどこまでもだめになるのが見えていても
不様さと愚かさに付きまとわれて
時間が経つごとに醜く腐り落ちていく

望みを殺がれながらも前に進む以外を知らないわたしを
頭の中でいつもあなたがせせら笑っている
滑稽で憐れで みじめだって
けれど一番嗤いたいのは誰でもないわたし自身
それくらいしたっていいじゃない
まともでなんていられないから
涙なんかもう出ない
ただ胸の奥が疼いて
息の仕方さえたまにわからなくなって

どちらを向いても苦しいばかり
それなら喘ぎながらでも付き合っていくほうがいい
傷つきながらどこまでも歩けばいい
ここは明日の見えないいばらのみち
ごまかすように口角を持ち上げて
強くて不敵な自分を装って


きっと探しているのはすべてが潰えて消えてしまう日
かわいそうなわたしはよく理解している
欲しても 求めても 何処にも何もないのだということを


(詩)白昼夢

この季節は嫌いだと貴方が言ったのは
さかのぼって何回前の夏のことだったろう
わたしはなんにも知らないで眺めていた
疲れたような貴方の横顔を
いつも顔色一つ変えずに澄ましていて
なのにどこか気だるげで 何をしても退屈そうで

何処も見ていない貴方にうかされていた
わたしに見えないものを見つめているように思えた
夢中になって探した
貴方の瞳をとらえて離さない景色を
わたしをどうしようもなく惹きつける 貴方の内側を



息もできないような熱の中
逃げ場のない光の中



全てが徒労なのだと理解したのは季節が二度廻る頃
いつも通り貴方は「またね」と言った
わたしはとうとう諦めた
ただひと時の熱にうかれただけなのだと
たとえ隣に並び立ったとしたって
貴方にとっては路傍の石と同じこと
そのことにひどく凍えたわたしは仕方なく
全てを忘れてなかったことにしようとした
新しい記憶たちで貴方を埋めて
同じ景色に違う色を塗りつけた


貴腐ワインの上手な飲み方を覚えて
(初心者には安い赤がいいって)

舌を鳴らすキスばかりを繰り返して
(貴方のそれはほとんど音がしなかった)

抱きしめあうより先に手をつないで
(初めて貴方とそうしたのは 何もかもを終えた後)


痛みは癒えても痕が残るから傷なのだろうか
それともまだ影を追っているのか
同じ暑さが戻ると同時に
仕舞い込んだはずの出来事がよみがえってくる
暴力みたいな日差しと一緒に
わたしの気持ちなんて 考えもしないで


隠れ家になってほしかった
わたしを隠してほしかった
ほんの少しの間だけ 意味もなく不安な夜だけでいいから


何もかもはもう過ぎ去ってしまった
同じワインを注いだって
貴方好みのキスをしたって
つまるところわたしはひとりっきりで
もがいているつもりで何処へも行けないままでいる
誰かが手を引いてくれればいいのに
期待を裏切りながら時間は流れて
なのに失望に俯くわたしだけ 同じ場所に残されていて

今朝は貴方の言葉を思い出した

「明日」は永遠に来ない日のことだ
それはすぐに「現在(いま)」になってしまうから
「今」には必ず「次」がある
だから明日という日はどこにもない
ただいつまでも目の前にあり続けるだけ

もうどうにもならない 本当に
わかってしまった
あなたの「またね」の正しい意味を
「また会うときまで」じゃなかった
それは次回を持たない「さよなら」
まやかしの希望 来ない未来と同じもの

ただ それだけの


呼びようのない思いが心を焦げ付かせて
わたしはまた息の仕方がわからなくなる
忘れたい 忘れたくない
会いたい 会いたくない
がむしゃらになるほどに引き裂かれていく
かなしみがつま先を濡らし始め
捨てられなかった記憶が海になって押し寄せる

誰か何処かに連れて行って
誰でもいいから お願い
此処でなければ何処でもいい
かりそめでもいいから「明日」を見せて
早くわたしを連れ出して
消えない「貴方」に攫われて 戻って来られなくなる前に

(詩)U 雨 2

空の鈍い色味が なんとなく温度を下げるような日
苦手でもない天気なのに どこかしら気が沈んでいた
心当たりが無いとは言えず
自分のことを小さくわらう

その唇に大ぶりの雫がおちた
細やかな粒たちが舞うのを眺めていたとき
二本目の煙草 パーラメントのメンソール
ふいに貴方のそれを思い出した
甘くてくすんだ味のキス
掠め取るようにわたしに触れて
貴方はよく顔を綻ばせた
驚いて そのあと照れて 少し膨れるわたしを見ながら
好きだった感触なのに よみがえると胸が痛んだ
つらくなってもう一本火を点けた
紫煙が緩くたなびいた


どっちも手なんか離さなかった
なのに心はいつの間にか離れた
そもそもそんなに近くなかった
後になってわかってしまった


もどかしかったのは埋められない隔たり
互いに違う場所を夢見ていた
勝手に相手に期待して 勝手に寂しくなっていた
薄々勘付いていた
ゆるしがたい違いがあること
ふたりとも それを認めることができなかった

ただ心があるだけでは越えられない
弱いわたしたちを試していたのは無情な真理
ボーダーラインがちらつくたび
背中を冷たい汗が伝っていた

不都合なものから目を逸らし続けた
そのうち貴方が視界から消えた
霧に紛れてみえなくなった
じきにぬくもりさえもなくなって
わたしはただその場に立ち尽くし
今も まだ


探したくても声が出ない
叫びたくても言葉がない
なのに想いがまだあの夜にいる
見失った貴方に捕まえられて
どこにも行くことができないまま



それでも時間ばかりが足許を流れ



ここに貴方はもういない
なのにいつだって突然甦る
そのたびわたしは思い描く
慰めにもならない不可能を何度も
もしも時間が戻せたら
もしももう少しだけ 素直に何かが言えたなら
吸い込んでいるのは憂鬱か 吐いているのは溜息か
絵空事はいつまでもやまない
だから心が重く塞ぐ
鈍色に染まる


短くなったそれを 最後にもう一度だけ吸った
ただ貴方の顔だけを記憶から取り出して
刹那に透けた突風がふきつけ 煙は跡形もなく消え去った
あとには降りしきる雨に濡れる わたしの褪せかけた恋だけが残った

(詩)あかねいろ

大概きみは部屋の片隅で煙草を吸っていた
リビングの床にあぐらをかいて
壁際で小さくなって
不機嫌そうなへの字の口に銜えたパーラメントの9ミリ
きみのあの目にとても弱かった
吐き出した煙が宙にゆらめいて
溶けて解けてくのを眺めるときの

仲直りの一言が出ないのはおたがいさま
妙なところが良く似ていた
意地っ張りのさびしがりやなとこ
寒がりで傷つきやすいとこ

だからなのか
そのくせなのか

寄りかかりあう重みにつぶれそうになっては
ぶつかって
傷ついて
傷つけて


あんなこと言うつもりじゃなかった

そういう意味じゃなかった


どの言葉も言い訳にしかならない気がしたから
自分から歩み寄るのはかっこ悪く思えたから
譲れなかったから

素直なかたちじゃなくたって
できることはきっとあったんだろう
たとえばお茶を飲もうとか
冷えるからこっちにおいでとか



気づいていたけど否定していた
こっちを向いたきみの瞳は後悔を伝えてたこと
腹を立ててぼくを悪者にしていると
そう思い込もうとばかりしていた



今はもう部屋に染みた記憶
西日が差すたび見える名残
ひとりで飲むための紅茶を入れるのに
スプーンですくったのは三杯分の茶葉
ガラスのマグの向こうに紫煙が透けた
あの日のきみの不器用な「ごめんね」
受け取りそびれたまっすぐなもの
伝えられなかったやさしい心地


空の明かりはまもなく落ちて
ぼくは黄ばんだスイッチを押す
きみの姿は蛍光灯の眩しさに消えて
冷めたオレンジペコの水面をため息が舞う


あかねいろが部屋を去って
あとには沈んだぼくの心と 憂鬱な影だけが残った

(詩)さよならは午前様

うとうとと仮眠を取った午前二時過ぎ
狭い仕切りと安い毛布の狭間で
少しの涙と寂しさをこらえた
流し込むウイスキーの熱でごまかして
好きでもない酒はどうしようもなく不味くて
手持ち無沙汰なままに考えてみる
きみとうまくいかなくなったのは
一体何が悪かったからなのか

(ぼくはきみのわがままなところが気に入って
 きみはぼくのからっぽなところに惹かれた)

答えはひとつも出やしなくって
ただひとりぼっちだってことだけが募った
いつだってそれはなくならなくて
やるせなさもうすら寒さも消えなくって
だからきみと一緒がいいって思っていたのに

きみのそばでもぼくはひとりぼっちだった
ぼくのとなりのきみもおんなじ
結局ぼくらはどうやったって
互いのふところの冷たさを温めることが叶わなかった


別れって そういうときにくるもんだよ


悟ったように語っていたのは誰だったろう
言葉だけがこの頭の中
風呂場のカビみたいにこびりついている
何度洗い落としても生えてくるのは真理だから?
それならだれもが結局はひとりぼっちだって方がまだましってもんで
そう思えるくらいにはきみのことが大事で
今だってその気持ちには変わりはないのに

何もかもがもうかみ合わない

きみを嫌いになんてなれないだろうに
それでもこれ以上は近づけない
さよならなんて言いたくないのに
隔たりが知らない間に大きくなっている
きっともうおしまいなんだって覚悟して
突きつけられていた喪失を引き受けたら
ようやくあの懐かしい心地が戻った
きみと出会う前からお馴染みだった感覚
ずっと嫌っていたはずなのに
それはひどく心地がよかった
それでようやく気づいた
きみの隣で必要なものをなくしていたこと
決して失うことのできないもの
誰より大切なきみ以上に


結局


孤独の中でしか生きられないのだ
どれほどうんざりしていても
どれほどそれを 投げ捨てたいと願っていても



ごめんね


潤んで掠れた呟きがひとつ
飴色の明かりの中に溶けた
閉じたまぶたの裏側で
あの日握ったきみの手の
腕の白さを切なく思った

意訳 Bruno Mars 『Grenade』

近づくのも容易ければ去るのもあっという間
あなたはそうやって今までやってきたんだよね
なにもかもを手に入れて
なのになにひとつ与えてなんてくれない

初めてのくちづけのとき どうして気がつかなかったんだろう
あなたが酷い人だってこと
あの時あなたの両目は見開いたままだった
どうして開いたままでなんていられたの?

わたしのすべてをあなたに捧げた
あなたはそれをゴミ箱に捨てた
まるでゴミみたいに放り投げたんだ
わたしがあげたもの なにもかも全部
いつだって欲しかったのはあなたの想い
ただそれだけ それだけが欲しかった
なのにあなた なんにもわかっていなかったね

あなたのためなら手榴弾だって掴んでみせる
刃に素手で立ち向かったっていい
電車の前に飛び込むことさえいとわない
気付いてよ、あなたのためならなんだってするのに

この痛みにも耐えきってみせる
自分でこめかみを撃ち抜いてやったっていい
そうだよ、あなたのためなら死んだっていいんだ
どうせあなたは同じことなんて してはくれないだろうけど

(ええ、そう あなたは決して…)

ひどくひどく打ちのめされてしまいたい
痣だらけになって 何も感じなくなってしまうまで
元いたところに戻るんでしょう
それなら悪魔によろしくとでも言っといて

邪なひと 悪いひと それがあなただった
わたしからブレーキを取り上げるくらい 微笑みひとつで事足りる
(そうしてこの心は歯止めをなくした)

わたしのすべてをあなたに捧げた
あなたはそれをゴミ箱に捨てた
どうでもいいものみたいに投げて捨てたよね
わたしがあげたものの なにもかも全てを
いつだって欲しかったのはあなたの心
ただそれだけ それだけだったのに
なのにあなた なんにもわかっていなかったね

あなたのためなら手榴弾だって掴んでみせる
刃に素手で立ち向かったっていい
電車の前に飛び込むこともいとわない
本当は気付いているんでしょう
わたしがあなたのためなら なんだってするってこと

この痛みにだって耐えてきってみせる
自分でこめかみを撃ち抜いてやったっていい
そうだよ、あなたのためなら死んだっていいんだ
あなたが同じことはしてくれないと わかっていたとしても

たとえばわたしの身体が炎に包まれていたとして
あなたは燃えて焼け落ちていくわたしのことを ただ眺めているだけなんだろう
嘘つきなひと わたしのことを愛しているだなんて
だってそうでしょ
あなたは決して、決してわたしのことを…

ねぇ、聞いて
それでもわたしは あなたのために手榴弾だって掴んでみせると思うんだ
刃に素手で立ち向かう覚悟だってできてる
電車の前に飛び込むことさえもいとわない
わかってよ、あなたのためならなんだってしてみせるから

この痛みを耐え抜いて
弾丸を頭に撃ち込んで
そうだよ、あなたのためなら死んでもいいんだ
でもあなたは違う わかってる、全部

わかってるって、あなたはわたしと違う
同じことなんて、絶対にしてくれない
してくれる筈なんかない
だってあなたは、決して、わたしを……



超訳 Lady Marmalade from "Moulin Rouge"(Christina Aguilera, Lil' Kim, Mya and Pink )

どこにいるの あたしのソウルメイトたち
聞かせてちょうだい 自由で気ままな彼女のことを


ヘイ シスタ 早く教えて 彼女はどうして過ごしてる?
ヘイ シスタ 早くお言いよ あんたはあたしのソウルメイト


あの人がマーマレードに出逢ったのは「あの」ムーラン・ルージュ
彼女は肢体を見せびらかすように道を歩いてた
そして彼に言ったんだって
「ハロー ねぇジョー、あなたあたしと遊ばない?」

Giuchie, Giuchie, ya ya dada
(どこかで何かが軋んでる)
Giuchie, Giuchie, ya ya here
(この頭の中にギシギシ響く)
彼女は魅惑のモカ・ショコラータ
それはクレオールのレディ・マーマレード


“今夜あたしと遊んでみない?”
“あなた あたしの隣で眠らない?”


彼女がシャワーを浴びてる間
あのコは部屋のベッドに座ってた
マグノリアワインを一本空けちゃったらしいわ
そうしておかしくなって イカれちゃったってわけ
彼女に溺れて 黒いサテンのシーツの上で

Giuchie, Giuchie, ya ya dada
(この音が聞こえてる?)
Giuchie, Giuchie, ya ya here
(部屋中がギシギシ軋んでる)
彼女は魔性のモカ・ショコラータ
それはクレオールのレディ・マーマレード


“今夜あたしが欲しくない?”
“あなた あたしと夢を見ない?”


「見返り」はガーターベルトにはさんでもらうわ
だから教えてあげる あたしたちのこと そのまんま全部
娼婦なんかじゃない あたしたちはちゃんと自立してる
つまりこういうことよ
あんたにお金があるっていうのに どうして自腹切る必要があるわけ?
わかんないかしら
悪かったわ それがあんただったわね
あたしは遊び続けたいのよ
邪魔なヤツらはほっといて Atariに夢中になるみたいにさ
イカしたヒールひっかけて イカれた野郎もひっかけて
それがムーラン・ルージュの4人の小悪魔

ヘイ シスタ あたしの心の姉妹たち
誰だってもらうなら現ナマが一番にきまってる

ワインはグラスにダイヤモンドを入れて飲む
そうすりゃ「お高い」味もするってもんよ
部屋を軋ませて楽しみたい?
欲しいのはモカ・ショコラータ?
それこそ本物のレディ・マーマレード


ねぇ ねぇ ねぇ!
早く彼女の肌に触れたらいいのよ
シルクみたいに滑らか カフェオレ色のカラダは最高
彼ってば きっとケモノになっちゃうわ
吠えて暴れて 泣き叫ぶのよ
さあもっと もっと もっと!


そして彼は9時5時の日常に戻る
他人に媚びてへつらうばかり つまらない灰色の毎日
眠りに落ちるたび あの日の記憶が忍び寄る
彼女がもっと欲しい もっと欲しい もっと欲しい…!


Giuchie, Giuchie, ya ya dada
(理性がギシギシ軋んでる)
Giuchie, Giuchie, ya ya here
(彼の心はもう砕けそう)
あのモカ・ショコラータに溺れたい
クレオールのレディ・マーマレードに


“今夜あたしが恋しくない?”
“あなた あたしが欲しくない?”


愚かな彼は泣きわめく
持て余すのはふしだらな欲望
罪深きはムーラン・ルージュの一夜の夢



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