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不埒な夢。

女性向け小説ブログ。年齢制限作品込みにつきご注意願います。

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ひねくれ考察

中学一年、十三歳。
反抗期だとか思春期だとか二次性徴だとか、とにかく色んな呼び名がつけられるお年頃。
それとどう関係があるかはおいといて、確かに十三歳のあたしの内側は、確実に小学校六年生の時に比べて、ずっと複雑になってきてる。
二色の絵の具がマーブル模様を描くように、混ざらないで、ひん曲がって。
そして、いつもなにかに怒っている。

何がそんなに気に食わないのか、ベッドにひっくり返って考えてみる。
苦手な科目は数学。
苦手な先生は生活指導の稲場女子。
何となく嫌われてる気がするのは、別の小学校から来た同じクラスの女の子。
懸案は来月始めの中間テストに、昨日下駄箱に入っていたラブレター。


それからもうひとつ。
自分達をモデルに『正しい性教育』をしたがる、うちの両親。


「……んんんにゃーーーーい!」


我慢と知性の足りないあたしには、そこまでが限界だったらしい。
整理しかけていたものがみんなパーになった。
まさに脳内ちゃぶ台返し。
いつもこうだ。
あたしがあたしなりに何かをどうにかしようとすると、いつも二人が邪魔をする。
出そうとしていた答えがどんでん返しに遭うことなんてザラ。
ちょっと前までは、それが当たり前だと思っていた。
子供はそうやって大人になっていくんだって。
でも、最近それじゃいけないんじゃないかって気がしてる。
パパやママに言われたとおりにして、誘導されるままの発想で物事をとらえて、それで大人になっちゃったらダメだって。
だって、それじゃパパとママの真似してるだけだ。
あたしが『あたし』になるには、あたしだけの何かがなくっちゃいけないんだもの。

でもあたしにはまだわからない。
『あたしだけの何か』って、一体何なのか。
どこにあるのか、どうやったら手に入るのか。
ただ、いっこだけ確信していること。
それがなかったらいつまで経っても、あたしはこの家では『お荷物』でしかないということ。


強く記憶に焼き付いているのは、十歳の夏休み。
パパのアトリエ。
鍵の開いたドア。
ママが微笑む、描きかけの絵。

汚れたソファの上、重なり合うパパとママ。



パパは毎年一枚、白いワンピースのママの絵を描く。
絵は大体、あたしが知らない間にできていた。
小さい頃はあたしが寝てる間とか、あと学校に行ってるときなんかに描いていたらしい。
ただ一度だけ様子を覗き見たその日から、もしかしたらあたしは変わり始めていたのかもしれない。


少しだけ開いたドアの隙間、視界に飛び込んできたのは金髪に埋もれたパパの手だった。
ママの髪はその当時は長くて、絵の具のしみたパパの手が、その髪をくしゃくしゃにしていた。
本当に薄い色の髪の向こうにきらきらひかる、いくつもつけたママのピアス。
パパの反対の手は白のワンピース越しに、ママの背中を強くつかまえていた。

ソファに座ったパパは、膝の上にママを乗せていた。
乗せられたママは上からかぶさるように、パパの首や肩にしがみついていた。
顔は見えなかった。
光を跳ね返すママの長い髪が、極限まで近づけあった二人の表情を隠していたから。
会話もひとつもなかった。
会話どころか音もほとんど聞こえなくて、うるさいくらいのじぶんの呼吸の合間に、微かに衣擦れがあるかないか。
パパの腰に回っているせいか、ただでさえ細いママの脚はいつもにも増して細く見えた。
膝頭からのラインの終わりのつま先は、なにかに耐えるようにきゅっと丸まっていた。


密やかで閉塞した何かを分け合う二人の雰囲気が、二人でないどんな人間をも邪魔者だと言っていた。
ここにいて許されるのは彼と彼女だけ。
そのほかの誰も、この場に介入することは許さない。
例えそれが、二人の子供でも。



パパとママはいつも、あたしを可愛がってくれた。
多分、とても愛してくれたと思う。
父親、母親として、私の居場所を作ってくれた。
でもあたしはわかっていなかった。
二人はあたしのパパとママであるまえに、お互いの恋人同士で、「奥さん」で、「旦那さん」なんだってこと。
そしてその関係に、あたしが割り込む余地なんてどこにもないんだってこと。


「奥さん」と「旦那さん」の間には、「子供」の入れないトクベツな関係がある。
仲良しなのは「あたしのパパとママ」じゃなくて、「旦那さんと奥さん」。
そんだったらあたしは、一体どこにいるんだろう。
あたしの居場所は、一体どこにあるんだろう。

小さいながらに、そんなような事を考えた記憶がある。


今からして思えば、あれは単なる「キス」じゃなかったのかもしれない。
お互いにしがみつきあう二人の手には酷く力がこもっていたから。
それに、何かの拍子にママが辛そうに身体を反らしたとき、あたしはなんだか見てはいけないような気がして、慌ててそこから離れたから。
だとしたらあたしはもう、今二人が見せたがっているものは、とっくに見ていたことになる。


子供っていう立場は、とても不安定で窮屈だ。
大人に守られていないと何も出来なくて、ときに自分の事も自分では決められなくて、それはなによりも狭苦しく息苦しい。
期待だとか優しさだとかが重たくて、たまに納得のいかないことを強制される。
そういうのが嫌なのに、あたしたちは大人の『好意』がないと住処さえない。

ちっぽけで、くだらなくて、ひとりじゃ何も出来ないあたし。
居場所として与えられているここは、一体どこなんだろう。
あたしは、一体何なんだろう。



―………ぐうぅ



「沙羅ちゃーん、ゴハンよー!」

「!」


むかつく。
本当にムカつく。
なんでこのタイミングでそう来るかな。
狙いすましてたみたいにさ。


「チッ、くっそ………はあぁあーいっ!!」



成熟に対して貪欲なのは、未熟の裏返し。
この時のあたしだってそうだった。
だから呼ばれてホイホイ向かった先の食卓、ご飯にぱくつきながら、あたしはひとりで不機嫌を撒き散らしていた。
自分が子供であることが認められなくて。
人が思うほど自分は子供じゃないのに、子ども扱いから抜けられないことが嫌でたまらなくて。


庇護の対象としてこの家で過ごさなければいけないことが、あたしにはどうしても納得できなかった。
そういうことを考えること自体が、子供の証拠だってことにも気付かずに。



(R15指定)愛の巣で居候

「はーい、できましたよー」

「ぅわぁー、おーいしそー!!
ねね、先に食べてもいい?」

「もちろん、アツアツのうちが一番ですからね
ささ、私のことはかまわずどうぞ」

「はーい、じゃ遠慮なく♪
ほら沙羅(サラ)ちゃんも食べよ」

「ふふ、今日のグラタンには沙羅の好きなキノコがたくさんですよ」

「!! んんんー! パパんまいっ!!
ほらパパも早く早く! 冷めちゃうよぉ」

「本当? ちょっと待ってくださいね、今エプロンを…」


―……


「あーあーパパ紐が絡まってる!
後ろ向いて、解いたげる」

「あら、すみませんね…」

「ほら、またカタ結びにしてる…
ちゃんとさぁ、ちょうちょ結びにしとけばいいのに……」

「いやしてるんですよ、してるんですけど…」

「でもいつもこうなってるじゃん」


年甲斐もなくいちゃつくパパとママ。
『仲良しで結構なこと』なんて思う人がいるなら、あたしは全力で抗議してやるつもりだ。
だってこれはただの前触れ。
これから始まる地獄の序章でしかないんだもの。

でも今日のあたしは違う。
いつもみたいに巻き込まれたりしない。
今日こそ、今日こそは負けないんだから!!


「…はい、ほどけたよ」

「ん! いい出来ですねグラタン」

「あー! ダメだよパパ立ったまま食べちゃ
お行儀悪い!」

「あら、アナタにそんなこと言われるとは 昔は私がそんなこと言ったら…っ」

「…っちゅ……だぁめ、それは言わない約束でしょ」

「……グラタン味ですね」

「んふ、パパの方こそ…っん」

「ちゅぅ……これは、なかなか…
私が作ったにしては、随分美味な……」

「ぁん……もうパパったらぁ…」

「私はあなたのパパでしたっけ、奥さん?」

「えへへぇ、だって『アナタ』って恥ずかしいよぉ」


パパとママは見る間にべったり。
お互いの背中や腰に自分の腕を絡めあって、顔のあっちやコッチにキスしまくり。
する方もされる方もニヤニヤ。

そりゃあ、幸せそうなのは『大変結構』だ。
けど見ている分には暑苦しくてしょうがない。
そうでなくとも今日はすこし蒸し暑くて、ママはいつもよりちょっと薄着。
ちょっとパパ見えてるよ、シャツの裾からママの素肌触ってるの。

横目に二人の様子を捉えつつ、さてそろそろか、と、あたしはふーふーしながら黙々とグラタンを食べる。
6月にもなって何でグラタンなんだ、しかもこんな暑い日に、と思うけど、そこはまあ言いっこなしにしよう。
パパが時々作ってくれるゴハンは、最高に美味しいから。
それに、このグラタンはあたしの好物だし。


「ぁん……んふふ、パパえっちだぁ」

「エッチはどっちですか……」

「やん…ダメ、グラタン冷めちゃう……」

「いいんですよ……私はネコ舌ですから…」

「あはは…んもぉ、バカぁ…」


パパがママの上に覆いかぶさる。
ちょっと背が反り返るママ。
あーあーまた始まった。
キスして、角度変えて、うぅ、う、し、し、舌……!


今だ、負けんな一条沙羅!!



―ガシャァンッ!!



「んにゃああーもうやってられっか!!」

「!」

「!!」

「何なのよもう朝から晩までイチャイチャベタベタ!
実のコドモが見てる前で何よ!
ハレンチなのよ! お下劣よ!!
言ったでしょ、実地で見させられるなんてイ・ヤ・ダって!!」

「……バレた?」

「……バレました?」

「バレるに決まってるよ!
腐ってもあんたらの子供だもん!!
てか一体何考えてんのよもおおおお!」


眩暈するくらいに腹が立つのは、これが毎度の事だから。
こんなにあたしが怒っていてさえ、二人はべったりくっついたままで、しかも揃って「あらま」みたいな、悪戯がバレたコドモみたいな顔してるから。
本当に、もう本っっ当にこの夫婦ムカつく。
ムカつくまま食べたグラタンがまた美味しいから余計にムカつく。



二人はクソみたいに仲が良い。
近頃は週末にふらっと二人で出かけては、遅くなるまで帰ってこない。
お土産に紅茶の葉っぱとか、アロマオイルとか買って戻ってきては、ソファでまたベタベタ。
あたしにもマリアージュのハニーディップクラシック(シロップみたいのでコーティングされたドーナツ)とか買ってきてくれる。

だから何も言わずにいたけど、知ってるんだ。

パパとママ、外で二人でデートして、いかがわしいこととかして帰ってくるって。
だって二人とも、行くときと帰ってきたときで顔が違うもん。
パパはすっきりな顔のわりにちょっとくたっとしてるし、ママも「はーやれやれ」を連発するわりにお肌はつやつや。
しかも二人とも、お風呂入ってきた後みたいな感じだし。

だって、こないだまでは夜中に目が覚めたら、いかがわしい声と何かが軋むような音が聞こえた、なんてしょっちゅうだったけど、最近は全然だもん。
前は小さかったから何だかわからなくて、あんまり気にもしなかったけど、今となってはそういうわけにもいかない。
週末の外出は、そういうあたしの変化を分かっての事らしい……けど。


もしかしたら、いやもしかしなくても、そんな二人にあんな話したのは間違ってたんだ、うん。


あたしは今年の春から中学生になった。
お受験で私立に入るでもなく、そのまま地元の公立中学に入ったんだけど、そしたらなんか男子連中がヘンで。

なんだか知らないけど、みんなして下品なことばっかり話してるのだ。
春休みは2週間ちょっとくらいしかなかったのに、人が変わったみたいに、みんないっせいにシモねたばっかり。
給食でソーセージとか出ると、なんか意味深な食べ方する子とかいたりして。
(あれもう本っ当に信じらんない!!)

それでもまあ、いいこともあったのだ。
先週は席替えがあって、5年生のときちょっと好きだった男の子と同じ班になって。
あ、ラッキー、なんて思ってたのに、その子まで目の前で、「連続で何回ヌけるか」なんて話しやがって。

正直、恋心なんてイッキに冷めた。


その話をしてからだ、二人がこんな風になりだしたのは。
元々仲は良かったけど、今ほどあからさまなことはなくて、二人はあたしの前では二人なりに「親」してた。
だから話をした時も最初は普通だった。
パパは、「男の子にもオトシゴロってやつが来るんですよ」とか言ってたし、ママも「あーあるある」って感じでほぼスルー。

だったのに、異変が起こったのはその週の週末。


寝る前の二人の寝室に呼び付けて、「私たちは愛する一人娘が誤った認識を持たないように、ある決断をした」とかって、そろってかしこまって。



『……はぁ』

『これはね沙羅ちゃん、とっても大事なことなんだ
何となく知ってはいると思うけど……パパ』

『……世の中ではなかなか、こういうことを正しく、実例とともに教育するということがありませんからね』

『? え、何何のこと?』

『だから、その……沙羅ちゃんももう中学生でしょ?
そろそろ…そういうことについて、ちゃんと、「正しく」知っておいたほうがいいと思うわけ
ね、パパ』

『そう、経験が先んじても、誤った知識やカタすぎる考えが固まってしまっても、よくありませんしね』

『だから何、意味わかんないって』

『『……赤ちゃんの、つくりかた』』

『…赤ちゃんのつくりか……!!
ちょ、何言ってんのもう!』

『クラスの男の子たちが興味津々なのは、つまりそういうことよ沙羅ちゃん
気持ちはわからなくないけど…そんなに下品でも、いかがわしい!って嫌悪するようなことでもないんだよ』

『そうですよ、沙羅
あなたも、クラスで誰か気になる男の子がいたりしたでしょ?
そういう気持ちとね、切っても切れない関係にあるものなんです、本来はね
ですから』

『……っ!』


―わあああああーーー! 何してるーーー!!


パパは隣にいるママにぶちゅっとキスして、そうしながらママの服を脱がし始めた。
ママはもんのすごく色白で、そのくせ肌にシミなんてひとつもない。
パパは唇をママのそこからほっぺ、耳に移動させて。


『今から……あなたに見せます…
覚えておきなさい、これは……決してやましいことでは…ぁっ』

『そう、誰とでもしていいことじゃないけど…そんなに硬く考えないで
好きな人とするのは…っん、素敵なこと、なんだから……』


話しかけながらパンツを脱ぎ捨てるママ。
ママの裸の胸に顔を埋めるパパ。


『っっっのばかぁあああああ!!
ヘンタイ! スキモノ!!
そういうのは他所でやってよ週末みたいに!!』

『沙羅!』

『ちょ、沙羅ちゃん待って!』


うちのパパは絵描きさんで、ママは詩人。
パパの絵にママが文章をつけて本を出したら、どこぞの評論家さんが「いい気持ちで就寝めるから寝る前に読んでる」とかって紹介してくれたらしく、そこそこな生活をしている。
経済面ではけっこう恵まれてるとおもうけど、不幸なのは家庭環境だ。
夫婦仲が良いのはありがたいことだけど、揃って芸術家ともなると教育方針がぶっ飛びすぎてる。
小さい子供がよく言う、「大きくなったらパパ(ママ)と結婚する」は禁句だったし(「パパはママのだからダメ!」だって)、好き嫌いはいいけど「食わず嫌い」はダメだって言われたり。

今のこれなんて、その最たるもの。


「……もうヤダ、こんな家」

「…沙羅?」

「…沙羅ちゃん?」

「ヤダもう、あたし出てく」

「出てくって……どこに?
行くアテなんてないでしょ?」

「……っ、ケンヤおじさんのとこに行くもん」

「やめときなさい沙羅、今行っても瑠李(ルリ)ネタでノロケられるだけですから
それに……どうせ向こうでも同じようなことしてますよ」


全く…あの人は本っ当にアレですから、恥も慎みもあったもんじゃない、なんてパパはこぼしてるけど、ケンヤおじさんがいたら絶対言われると思う。


んな事おめにだけぁ言われたくね、って。


「いいじゃん愛妻家って事でさ
なんだかんだで、ねえさん喜んでるし
ほら知ってる? 瑠李ちゃんの出産のときの分娩室の話」

「あれは…まぁ美談とも言えなくはないですけど………とにかく
沙羅、私情で他のご家庭に迷惑はかけられません」

「あのね……それくらいあたしだってわかってるよ!
でも非常識なのはあたしじゃなくてパパたちじゃない!!」



―どこにいるのよ、性教育と称して自分達の『夫婦の営み』を見せる親が!



「…………ヘンですかねぇ?」

「ん~……そうかなぁ?」

「……わかった、わかったもーいいです!
パパとママに普通を求めたあたしが間違ってましたっ」

「普通……悠さんあたしら普通だよねぇ?」

「ですよねぇ?」


―どこが普通だ、どこが……


きょとんとした顔をしている両親に、あたしは頭が痛くなってきた。
何かもうどうでもよくなってきて、徒労感のままにグラタンを頬張る。
少し冷めて食べ頃のそれは、やっぱり美味しかった、けど。


あたしは知ってる。
本当はパパとママは名前で呼び合ってるってこと。
あたしの前では都合上、パパ、ママとかって呼び合って見せてるけど、お互い慣れないから何かあるとすぐに呼び方が「悠さん」「スラ」に戻っちゃうんだ。

別になるそんなとこで頑張らなくたっていいのに。
二人があたしの父親と母親だってことは分かってるし、それはずっと変わらないことなんだから。


そんなに、あたしに気を遣わないでほしい。
そこまでされなきゃわかんないほど、あたしはもう子供じゃない。



「……早く独り立ちしよ」

「ん? 沙羅ちゃん何か言った?」

「…別に、なんでも」



何だか自分が、この家の中で一番やっかいなお邪魔ムシのお荷物みたいな気がして、ちょっとばかりヘコんでしまう今日この頃なのだった。


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